東京工業大学附属科学技術高等学校 科学部主催
校内向け特別講演会

自分たちの専門が大活躍!?
次世代超大型望遠鏡TMT その工学と科学
- カリフォルニア経由 未来との交信

活動報告

講演会ポスター

次世代超大型望遠鏡TMT(Thirty Meter Telescope)は、
これから世界に3つ作られる、口径が30mもある超大型望遠鏡の1つである。
日本では国立天文台が中心となり、米国、カナダ、中国、インドの5か国で協力して製作を進めている。
その目的は、可視光から赤外までの波長で、これまでの観測よりはるかに遠い、宇宙最初の星や銀河、系外惑星とそこにいる宇宙生命を探すことである。
3次元コンピューターグラフィックスによるTMTの完成予想動画(2:20,クレジット:国立天文台)がこちらでみられる
本講演会は、TMTプロジェクト・林左絵子先生をお迎えして、TMTの科学と工学、
そして、国際科学技術プロジェクトで科学者・技術者として働く時に、備えておくべきこと、大切なことについてお話しを伺った。


NEWS!
*この講演会について、TMTブログでご紹介いただきました!  https://tmt.nao.ac.jp/blog/1506



日 時:
2021年4月18日(日) 10:00~12:00(12:20に終了)

場 所:
Zoomによるオンライン(各自自宅から参加)
※カリフォルニアの林先生とZoomにより接続

講 師:
林 左絵子先生
TMTプロジェクト・メンバー
国立天文台(NAOJ)および総合研究大学院大学 准教授
すばる望遠鏡では主鏡の性能維持、TMTプロジェクトでは主鏡・分割鏡の品質保証をご担当。
(ポロシャツのTMTのロゴに注目!)

参 加:
本校生徒・ご家族・卒業生 当日最高接続数74

プログラムと内容:

9:50 - 10:00 講演会前説明

10:00 - 10:40 第一部 「工学」
第一部は、TMTの工学について「TMT主鏡に生きる日本のお家芸」と題した講演が行われた。
製造工程の動画等、滅多に見られない動画や画像を見せていただいた。
TMTの技術的概要や国際協力、日本が担当するTMTの主鏡の要求条件や高い精度、
架台の搭載ロボット等の工学的レベルの高さ、そして、日本のメーカーの活躍について伺った。

TMTは、5か国で協力して製作しており、各国が担当する箇所が決まっている。
日本の役割は大きく、主鏡と架台(主鏡を載せる部分)の主要部分を担当する。
口径30mの主鏡は492枚の分割鏡でできており、4か国で分担し製作している。

 ←クリックでTMTサイトへ
【左】日本の分担(望遠鏡本体の構造)と【右】分割鏡による主鏡:
(TMTプロジェクト「紹介パネル」より。クレジット:国立天文台)

極限性能を引き出すために分割鏡は、4カ国共通の厳しい仕様を満たさねばならない。
表面を磨く精度は、関東平野を平らにするとしてコピー用紙2枚ほどの厚さの誤差しか許されないほどである。

鏡の原型を作るまでは全て日本のメーカーが担当している。
主鏡を載せて目的の方向に向けるための架台部分や、主鏡セグメント搭載ロボットも日本のメーカーが担当する。
しかも、TMTだけでなく、他の超大型望遠鏡GMT,E−ELTにも日本のメーカーの製品が採用されている。
つまり、3つの次世代超大型望遠鏡全てで日本の技術が活躍する!ということだ。
そして、将来、この技術を担うのは、次世代の(つまり自分たちの世代の)日本の技術者ということになる!

TMTと関連工学分野(講演会スライドから)
TMTの概要(機器と性能)

TMTは、様々な専門分野の最先端の工学で開発・製作されていることがわかり、
自分たちの専門を活かすことができるのはどこか、考えるきっかけとなった。
TMTの製作における日本の役割が大きいこと、
そして、他の二つの次世代超大型望遠鏡プロジェクトでも日本のメーカーが活躍していることを知り、
この日本の技術を代表して、自分たちも将来、TMTのような国際プロジェクトの一員として、
自分たちの腕を生かすチャンスがあるかも、と、やる気につながった。

10:40 - 11:00  質疑応答
挙手・チャットにより直接、当日に受け付けた質問と、参加申し込みの際に受け付けた質問の中から、
「目視で確認検査できる?」「免震構􏰀はある?」等、7つの質問があった。
 → 参加申し込みの際に受け付けた質問と回答はこちらで

11:00 - 11:50 第二部 「科学」
第二部のTMTの科学についての講演は、「TMTは第二の地球もしくは宇宙生命を見つけられるか」と題して、
この題の通りの問いかけから始まった。

第二部の様子

系外惑星は、太陽系の外にある惑星である。遠くにあって小さく、自分で光らないので暗く、とても見つけにくい。
この系外惑星のその観測方法と今までの発見について、すばる望遠鏡を始めとする観測画像やグラフ等の実際の観測データを用いて教えていただいた。
系外惑星の中でも生命が存在する可能性のあるもの、特に、地球型惑星を見つけるため、
地上の望遠鏡による観測と宇宙探査が連携し、今まで月・火星・木星や土星の衛星などで行われてきた太陽系探査の成果を生かし観測を行っている。
この研究には、東工大の地球生命研究所ELSIが、地球を含む惑星地質から生命探査まで、最先端の研究を行っている。

TMTが目指していること、超高性能がどのようにして発見に貢献するかを知ることができた。
林先生が今、製作しているTMTは、10年後、今の高校生や大学生が仕上げ、地球型の環境を持った系外惑星を調べているかもしれない。


【左】講演の様子と【右】私たち高校生へいただいたエール(講演会のスライドから)

ご講演の最後に、TMTやJPLを例とした、宇宙や天文の国際的な科学技術プロジェクトでのキャリア(仕事やメンバーとして必要なこと)について、聞かせていただいた。
プロジェクトメンバーは、いろいろな国から性別・人種・年齢問わず、多様な属性を持つ研究者・技術者が参加していて、もちろん女性も多い。
例えば、NASA/JPL のPerseverance Rover Team メンバーとその多様な担当分野はこちら("Perseverance Rover Team " Meet the Martians")で見られる。
英語が母国語でない人も多く、英語は道具にすぎず、共通語は数学や製図である。
研究者・技術者は、自分の専門能力で活躍し、プロジェクトに貢献している。
そして、科学技術プロジェクトは、様々な研究者・技術者が様々なアイデアを持ち寄り、失敗にめげず大きな新しいことを実現するところである、ということだ。

ご講演全体を通して、TMTを始めとするビッグ・プロジェクトの「工学」と「科学」を自分たちの世代がリードするのだ、ということを実感した。
ご講演の最後に、林先生から
「自分がやりたいこと、興味のある分野を見つけて、高校生の今からそれを磨くことで、プロジェクトを目指すことができる!」
と、専門の勉強を始めた自分たちへのエールをいただき、自分たちが今学んでいる専門がますます好きになった。

10年後、今の高校生や大学生がTMT等で活躍する頃には、月には人が住み、太陽系探査の基地になる。
火星にも、現在行われているPerseverance等の無人火星探査の成果を回収しに、人が火星に行く時代になっている。
参加申し込み時に渡された林先生からの宿題は、このためのトレーニングだった!

一つだけ持っていけるとしたら、何を持って行きますか?

「緊急食糧、何を持っていく?」
(↑クリックすると回答へ)

11:50 - 12:15 スペシャルプログラム「TMT研究者クイズ」
このTMTプロジェクトで働く自分をイメージしながら講演を聞いてもらうため
「将来TMTで活躍する自分を見つける」ことを講演中の自分たちのミッションとした。
そこで、講演では、TMTプロジェクトの研究者になったつもりで、「TMT研究者クイズ」に挑戦していただいた。
設問は以下の通り。

Q1 プロジェクトにいるとよいキャラクタはどれ?(単一回答) Q2 働くならどこ?(単一回答)
Q3 研究者・技術者に大事なことはどれ?(複数回答)
Q4 最初にどこを観測したい?(単一回答)
Q5 TMTで宇宙生命を発見!どうする?(複数回答)
Q6 自分が貢献できる(したい)としたら、どれ?(単一回答)
Q7 英語力はどれくらい必要?(単一回答)
Q8 自分がTMTに携わるとしたら...(単一回答)
Q9 今日、「スゴイ!」と思ったことはどれ?(複数回答)
Q10 今日、この講演会に参加して...(複数回答)

軽い内容から真剣に考えてしまうものまで全10問、制限時間内に答える。
全て正解がないクイズで、質問に対して自分の考えに近い選択肢を選ぶアンケート形式である。
58名から回答を得た。
ここでは、二つ抜粋してご紹介する(全ての結果はこちら!

最初に観測したいのはどこ?そして、TMTで宇宙生命を発見したらどうする?


星印がついているのが林先生の回答である。
最初にどこを観測するかは、それぞれの好みで回答が別れているが、
 その結果、宇宙生命が発見されたら!
については、いちばんの人気は「その惑星へ探査機を送ること」。
ただし、林先生と同じ「宇宙飛行士になって会いに行く」 ことを希望した人も26%(15名)いて、
先生とツアーを組んで出かけられそうな感じの結果となった。

12:15-12:20 閉会
林先生一緒に記念写真を撮影! 


Zoom式記念撮影での一枚

12:20 - 13:30 質問コーナー(時間外開催)
参加希望の参加者が残り、追加で白熱の質問コーナーを行った。
カリフォルニアの先生に、遅くまでおつきあいいただき、ありがとうございました!

まとめ:
講演会終了後に、事後アンケートをお願いした。32件の回答をいただいた。
興味深い結果をご紹介する。

この講演会でTMTについて知って「スゴイ!面白い!」と思った点


2番目に多い回答「理学も工学も活躍していること!」に注目したい。
TMTプロジェクトには、様々な科学・工学の分野に専門を活かせる場所があるとわかった。
それがやはり自分たちの印象に強く残った。

また、自分たちにとって、とてもインパクトがある結果を紹介する。

自分が貢献できることと英語力


Q6「自分が貢献できる(したい)としたら?」に対して、半数を超える人がやはり「専門能力」を挙げている。
Q7「英語力はどれくらい必要?」には、
「ネイティブ相当」 と「英検1級以上」を合わせると半数以上の参加者が、高い英語力を必要とすると考えていることがわかる。
しかし、林先生の回答は「レストランで食べたいものを注文できる程度」である。
自分たちは、必要以上に高い英語力を必要とすると考えているのである。
その一方で、「英検1級以上」に並ぶ25%の参加者が「非言語コミュ力」を選び、言語に頼らぬ意思を示している。

講演から学び、この結果から言えることは、講演で先生が示してくれた通り、

 自分たちは、 専門をしっかり磨き、英語を必要以上に壁と感じないようにして、
 本気で最先端のプロジェクトを目指してみていいのではないだろうか?


ということだ。

もう一つ、Q10「今日、この講演会に参加して」に対する回答をご紹介する。



林先生のご講演のおかげで、TMTについて知ることができて楽しみが増えた。
TMTについて知れば、楽しみにし、目指す人がきっと現れる。
そして、将来、TMTを製作したり運用したり、使用したりする人が、ここ、この講演会から現れるかもしれない。
これを、講演して下さった林先生への御礼として、そして、TMTで活躍している皆様への応援にできればと思う。

感 想:
事後アンケ―トに寄せられた、林先生へのメッセージや講演会の感想を抜粋してご紹介する。

・小学4年の夏休み、自由研究で宇宙新聞を作る為、国立天文台や宇宙ミュージアムTenQに行きました。
 そこでTMTについても知りました。実際に働く林先生のお話を聴くことができて、嬉しかったです。

・TMTは、設計や施工だけでなく、運用にも高度な技術が必要な凄い施設だなと感じました。
 完成して、そこからどんな研究成果が出てくるか、たのしみです。

・なかなか知ることのできない世界的なプロジェクトの裏側を知ることができ有意義な時間を持てました。  TMTの完成を待ちわびています。

・漠然としていた、自分たちの将来・科学技術プロジェクトの世界がどうなっているのか、すごく楽しみになりました!
 TMTプロジェクトは、たくさんの役割(専門を活かせる場所)をたくさんの研究者・技術者がつとめ、
 様々な課題をクリアしていきながら完成する研究者の集大成なのだと感じました。
 最先端のTMT、全てが新しい挑戦である中で「成功するまでチャレンジする」姿勢を見習って、
 現在の先生方の科学技術を受け継げるようになりたい!と強く思いました。

・TMTが超巨大で超精密な望遠鏡であることを知り、また、とても興味深い最新の科学技術のお話をたくさん聞くことができて、
 宇宙や望遠鏡にとても興味を持ちました。
 自分は化学を専門に学んでいて、将来天文に関わることはおそらくないだろうと考えていました。
 このたび林先生のお話を伺って、天文の分野でも自分の得意な化学を活かせることを知り、
 自分の将来の選択肢が大きく広がったように感じました。(科学部FT)

・TMTプロジェクトの部門一覧のスライドを拝見して、仕事は「作る」「使う」だけではなく、
 専門分野ごとに細かく分かれていることが印象に残りました。
 科学技術プロジェクトでの仕事は、知識が大量に必要で難しいと思っていたので、
 この中のどれかに自分にピッタリな部門があるかも!と思うと、将来の夢により近づいた感じがします。
 先生のおっしゃっていた、「面白いから続けられる研究」に行きつけるように、これからも勉強をがんばります。(科学部SK)

・私たちが学ぶ専門教科を今後どう活かせるのか、未来が明るく照らされました!
 特に、TMTのような国際的な科学技術プロジェクトでの働き方についてを聞いて、将来の選択肢を広げてみようと思えました。
 林先生が最後にお話していた「英語は、伝えるためのツールにすぎない」という言葉で日本から海外へ進む勇気をもらえました。(科学部TM)

科学部より御礼申し上げます!
講師の林左絵子先生には、講演会だけでなく、開催まで打ち合わせやディスカッションなどを含め、
たくさんのお時間をいただき、心から感謝しています。
ご講演を聞いて、今から自分たちにできることを早速見つけ、がんばりたいと思いました!

また、講演会にご参加下さった皆様には、何回も回答に協力していただきました
この活動報告で紹介したのはほんの一部ですが、アンケート結果は全て林先生にお届けします。

科学部一同、参加いただいた本校生徒・卒業生の皆様と一緒に、これから専門の腕を磨いてがんばっていきたいと思います。

参 考:
TMT関連のWEBサイト一覧
◇TMTをもっと知りたい!リンク集
プロジェクトサイト(日本語)https://tmt.nao.ac.jp/
TMT ツイッター(日本語)https://twitter.com/TMT_Japan

◇英語にチャレンジ!
TMTをもっと知りたい!リンク集(英語)
TMT ツイッター(英語) https://twitter.com/TMTHawaii
TMT本部サイト(英語) https://www.tmt.org
TMT Hawaii facebook (英語) https://www.facebook.com/TMTHawaii
TMT本部求人(英語) https://www.theapplicantmanager.com/careers?co=tm
TMT Hawaiiを含むマウナケアの天文台全体の求人(英語)
 http://www.maunakeaastronomyjobs.org

(2021年5月24日 記録・宮崎)




2021年5月24日更新
東京工業大学附属科学技術高等学校 科学部